リンカーン日誌

或る量的遺伝学者のテニュア取得までへの道

コールド・スプリング・ハーバー研究所での学会参加記

先月はコールド・スプリング・ハーバー研究所にて開催されたProbabilistic Modeling in Genomicsに参加してきました。コールド・スプリング・ハーバー研究所が開催している数ある学会の中では比較的異色で、確率や統計学を全面に押し出して分子生物学に取り組もうという姿勢が学会の趣旨です。正式には今年が記念すべき第一回目の開催であり、他のCSHL学会と同様に定期的に開催することを検討しているようです。

コールド・スプリング・ハーバー研究所というと分子生物学が有名ですが、過去には量的生物学の分野でも名が知れている研究者が在籍しています。現在はSimons Center for Quantitative Biologyが設立されて、こちらの分野にも力を入れているようですね。個人的な参加理由は研究者人生の出来るだけ早い時期にコールド・スプリング・ハーバー研究所に足を運んで、所属研究者やキャンパスの雰囲気を掴みたかったということが第一でした。偶然にも自分が興味ある学会が今年開催されることになり参加を決意しました。

さて学会ですが参加者は計200名強。10/14-10/17にかけて、1. Demography and Admixture、2. Assembly and Variant Identification、3. Systems and Structural Biology、4. Population Genetics and Natural Selection、5. Functional Genomics、6. Quantitative Geneticsの分野で発表が行われました。参加者の大多数がヒトを対象とする研究者で農学系の学科からは自分が把握した限り自分を含んで2人のみでした。自分の専門分野である量的遺伝学もテーマの一つで、ヘンダーソンの混合効果モデルが頻繁に用いられていました。ただ残念ながら半数の発表が量的遺伝学と統計遺伝学を単に同義語として扱っていました。遺伝育種学から量的遺伝学を学ぶ者と統計遺伝学から量的遺伝学を学ぶ者は、量的遺伝学の捉え方が異なるようです。量的遺伝学は少し不満が残りましたが、他のテーマは圧倒されつつもquantitative biologyの奥深さを垣間見れた気がしました。

コールド・スプリング・ハーバー研究所ですが、ニューヨーク州ロングアイランドは人里離れたローレル・ホロー村に位置します。東に向かえばニューヨーク州立大学ストーニーブルック校があります。キャンパスを一歩でも出たら車が必要ですね。

最後に湾に面した綺麗なキャンパスを写真で紹介します。学会発表が行われたのがキャンパスの入り口に位置するGrace Auditorium。綺麗な講堂を備えています。

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食事が提供されたのがBlackford Hallです。食堂はこんな感じ。

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少し歩くとCold Spring Harborが見渡せます。母校であるウィスコンシン大学マディソン校を彷彿とさせます。

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CSHLビーチにも足を運んでみました。

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キャンパス内の歩道です。

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他にはトランスポゾンの発見でノーベル賞を受賞したMcClintockの名を冠した建物がありました。

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この学会の今後ですが来年はオックスフォード大学、再来年はオーフス大学、2018年度に再度CSHLにて開催される予定だそうです。