リンカーン日誌

或る量的遺伝学者のテニュア取得までへの道

米アカデミアの就職面接

アメリカのアカデミアにてPIとして独立するには、まず面接 (job interview) を勝ち上がらないといけません。 公募への応募過程は去年書いたこちらの記事(その1その2)をご覧ください。上記で述べた書類選考を突破すると2〜3日間に及ぶ面接に呼ばれることになります。通常面接に呼ばれるのは3名前後です。書類選考ではボスや所属大学の知名度が影響を与えることは否めませんが、面接では候補者自身の能力が直に測られます。例として採用側は候補者が筆頭で過去に書いた論文は本当に自分で考案して完遂したのか、それとも実際は裏でボスがやったのかを見破ろうとするでしょう。以下は僕自身の面接時の行動記録です。ちなみにこの間に発生する費用はすべて大学持ちです。

日曜日:16:33に空港へ到着。教授Aが車で迎えに来てくれる。教授Aに伴われ市内のステーキ店にて夕食をご一緒する。この時点ですでに面接が始まっている。食後はおそらく市内で一二を争う豪華なホテルに宿泊。

月曜日:6:00に起床して研究プレゼン (job seminar) の最終練習。7:30に宿泊ホテルの朝食ブッフェを学科長と共にする。8:45に教授Bがホテルまで迎えに来てくれる。学科長に別れの挨拶して教授Bの研究室へ向かう。ホワイトボードを使用しながら議論する。これも面接の一部。9:30に教授Bにより別の建物へ案内される。ここで学科を超えた大学上層部の教授Cとの面接。10:15から同じ建物内にて学部長Aとの面接。11:00に遺伝学グループの大学院生Aが迎えに来てくれる。そのまま動物科学科へ。遺伝学グループに所属する大学院生たちとの雑談を兼ねた面接。12:00からは選考委員の教授陣との昼食を兼ねた面接。いよいよ13:30から最も大事なセミナー発表。自分の過去・現在従事している研究に加えて、将来の研究課題も紹介する。聴衆は30名ほど。14:45からは大学と親しい関係にある政府系研究所の研究員との面接。15:45からは動物科学科の他分野所属の教授陣とグループ面接。16:45に教授Cがホテルに送り届けてくれる。しばしの休憩後、18:00から選考委員と夕食を共にする。向かった先はカレー屋。食後はホテルに戻る。これにてこの日組まれていたすべての予定を消化する。

火曜日:7:30に教授Cと朝食ブッフェを共にする。そのまま教授Cが学科まで送り届けてくれて、9:00から教授Dとの面接。9:45からはexit interviewと称した学科長との面接。オファーはいつまでに出す予定かを教えてくれる。10:15に教授Cが徒歩にてキャンパスを簡単に案内してくれる。そのまま別の建物へ向かい11:00から学部長Bとの面接。11:30に大学院生が迎えに来てくれて空港まで送ってくれる。13:13発の飛行機にてマディソンへ。これにて2泊3日の面接が終わる。

以上が自分の体験記です。その後選考委員は各自の意見と僕と面接した人たちすべての意見を多少取り入れた上で、オファーを出すべき候補者を学科長や大学上層部へ推薦します。以下は僕自身の面接準備に重宝したサイト群です。異国の地であるアメリカで独立の野望を胸に刻んだ人に少しでも参考になりますように。

  1. 日本語で得られる情報には僕が把握している限り以下があります。

  2. こちらが最も参考になった情報源です。特に1つ目のGuoさんのPDFは何度も読み直してメモしました。

  3. 応募者と選考委員の両者の経験に基づくアドバイス。選考過程の内部情報も少し記述されています。

  4. アドバイスが簡潔にまとまっているサイトです。

  5. こちらの記事は出願者ではなく選考委員の視点から見た候補者選びの裏側に言及されており興味深いです。総210名に及んだ応募者をどのように絞り込んでいき、最終的に面接に呼ぶ5名が選ばれる過程が述べられています。

  6. 大学や学科がどのように運営されているかを金銭面の視点でまとめています。学科長や大学上層部の人との面接時に参考になると思います。

  7. 自分の面接前にはすべての記事に目を通すことは出来ませんでしたが、テニュア・トラックポジションを目指す人たち向けのリンク集です。

  8. こちらは30年前のテニュア・トラックポジション競争の感想が描かれています。

  9. ある大学からのオファーを受理した後に、結果がまだ通知されていない残りの大学へ辞退を申し出るときに参考になるページです。

  10. こちらは大学側が公募を出したけど、候補者獲得が失敗に終わる時はどのような場合があるのかが述べられています。